湯山玲子さんの「女装する女」を読んだ。
http://www.shinchosha.co.jp/book/610291/

実は年明け前の話で、偶然、刊行記念イベントのトークショーにも行って、しかもゲストが菊地成孔で、とっても楽しかったし、このイベントだけでもかなり書きたいことがあるんだけど、それは別の機会に記す。

現代のワーキングウーマン(?)たちは、意識的に女性らしい服装をするとき「女装する」って言うらしい。らしい、と言いつつ、気持ちは分かる。
服でなくとも、例えばネイルカラーを施したり、普段より踵の高い靴を履いたりするとき、若干テンションがアガる。

男性受けという意味で女装の場合もあるだろうが、見合いの席でもなければ、女は、女になるぞという気合いを、自分自身を鼓舞することに利用しているのではないだろうかと思う。つまり女性にとっても女とは、非日常的に、あるいは自分の性質の一部という意識で付き合っている存在ではないかと。ほんじゃ日常ではどんな生き物なのっていう。女という生き物は、日常にはいないのかっていう。

女性である私が言うのもおかしな話ですが、女性は複雑で多面的だと思います。現代社会、特に都会で生きる女はより、複雑だと思います。私って単純よ、と自ら言い放ってしまうくらい、複雑だと思います。

自分で複雑と言い切ってしまうことが、対外的に全く得をしない行為であることを、女性は頭のどこかでわかっています。私は複雑です。この一言で、男性に「いや男だって」とトンチンカンな鍔迫り合いを挑まれることがどんなに面倒であることもわかっているし、もしくは「面倒な女だな」と寂しい距離をとられてしまうことも、わかっているわけです。しかも、そういう意味じゃなくて、と真意を改めて話そうとしても、もはや彼らは聞く耳を持ってくれないのだ、ということも。(複雑、という言葉を、弱い、に言い換えても面白いかもしれません)

しかし実際、複雑です。月に一週間、自分の意志とは無関係に股間から経血が溢れてくることすら世間に隠して生活しなきゃならない。自分という個のためというより人類が繁殖するための機能なのに、繁殖する気があるときもないときも、表ではまるで素知らぬ顔をして、しぶしぶ付き合うわけです。

人のために、人類の未来のために、つまり他のために、集団生活のために生きるよう遺伝子に仕組まれているのが、女というものなのかも知れません。現代社会における女性の複雑化とは、なるべくしてなったのかも知れません。女が複雑、というより、現代社会において、複雑化という事態が、現象がひき起こっている、と言った方が正確かもしれません。(このへんはだいぶ語弊があると思うけど、私も書き始めると延々と続けてしまいそうなので、詳細割愛でいきますね)

エニウエイ。「女装する女」の話に戻る。タイトルこそシニカルな予感にドキっとさせられるけれど、皮肉や嘲笑のために書かれた、ガックリくる本ではありません。むしろ、ここのテの「考察本」には珍しい、優しさや大らかさすら感じさせるのです。

ロハス女、スピリチュアル女、スポーツ女。現代のドマンナカを生きるがゆえに、時に滑稽なほどに極端に走る、バラエティに富んだ数々の「女の生き様」を、筆者は決して嘲笑しません。同じ「女」という重荷と付き合い続ける仲間として、鋭く見破り、温かく見守ってくれます。結構大変な思いをしてるよね、アンタがんばってるよ、ヘンテコだけど!ってバシンと背中を叩いてくれるような、姉御気質とともに。

実際湯山さんの、上品でさっぱりとしていて、元気で粋で、というお姿や喋りっぷりを見ていても、本当に素敵でした。最高。女というものに対して暗さやコンプレックスを感じさせない方だからこそ陰湿になりがちなテーマを、カラリと軽やかに笑わせる文体で描けたのだと思います。

その湯山さんは「できれば男性に読んで欲しい」と仰っていました。私も同感ですが、積極的に手にとってくれる男性は少ないかもしれません。

(余談ですが、湯山さんがこの本を書くきっかけとなったのは、マーケティングをしている男性が「女らしさや女性のニーズに沿った商品開発をしても全然モノが売れなくて困っている、意外なブームばかり起きて全く傾向が掴めない」と、嘆いていたことらしい)

(しかし本が出た今「女装する女」というキャッチーなタイトル自体が、ブームになる可能性もある)

最近、NHKスペシャルでも「女と男」が放送されたばかり。女を理知的に知ることが、男女それぞれにとって身近になる予感があるのは、有り難いことではありませんか。完全に知ることが出来なくとも、知ろうとしてもらえるだけでも。

興味深く見たよ、という男性は私の周りに複数いらっしゃいました。有り難いことです。少しでも女の実態に興味を持ってくださった殿方の皆様、あるいは女という内なる蟻地獄に足を取られそうな婦人の皆様、是非ご一読を!

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Re: this entry
From: はな Date: 2009/02/20 3:52 AM
わわ、嬉しーい!すっごい嬉しーーい!!
著者でもなんでもないけど、田中さんとこのテの話したいから、
すっごい気分アガります。ありがとうございます!!!

それぞれの事例は滑稽にも見えるんだけど、全ては
よりよく生きたい、救われたい、解放されたいという
深層心理の願いを、セルフケアで叶えようとしている現れで。
それが文章化されているという点でも、
絶えず「意味不明の私」と付き合い続け、
「結局は女が耐えるしかない」社会を生きる女性にとって
スッキリするし、励みになる一冊だと思います。

以前NHKスペシャルで「女と男」という企画が組まれ、
遺伝子的に違いを解明して見せていました。
どうやら、女性は「対人間」での関係性をより生産的に
もっていくのが得意で、男性は「対人間以外」が得意な様子。
大昔、狩りに出ていた名残りなんだそうですよw

> どこかしらのマイノリティに属すると
> こういう感覚にも敏感にならざるをえないのよね。
> 面倒っちゃ面倒かもしれないけど、
> その分、人間観察がとっても楽しくなる。
> それが数少ない特典の一つかしらね?えぇ。

泣かせるなあ・・・ほんとですね。じんわり響きます。
どっちに転んでも、右肩上がりにシアワセが増量するわけではないけど、
心地いい方、得意な方を無意識に選んで歩くようになってるんですね。
田中さん、本書いて!あなたが書かずして誰が書いてくれるのー
From: 田中 Date: 2009/02/16 7:56 AM
この本さっき読んだわ。
貴女様お薦めだから買いにいったのよ。
まぁ私は心が女装なので資格あるじゃん?
とか思って。えぇw

この分野(タイトルからすると)からすると
上野千鶴子調のお勉強はできても
世間はそれじゃ生きていけないっすってノリかしら?
と思ったのだけど全然違う。
いい意味で裏切られた本でした。

これは洋の東西を問わずだと思うのですが、
女が正鵠を射た時に多くの男はヒステリーだとか
可愛げがないって言うのでしょう?
それが面倒だから西洋の女は男の話はわからないふりを
したり日本だったら頭の悪い振りをしたり、ね。

多くの男はこういう事をしなくてもいいから
そういう面では本当に鈍感。
うらやましいほど。
でも、この本を手に取って読む男は
どこかしら、変だとか、知りたいという意識があるだけ
いいと思うわ。

どこかしらのマイノリティに属すると
こういう感覚にも敏感にならざるをえないのよね。
面倒っちゃ面倒かもしれないけど、
その分、人間観察がとっても楽しくなる。
それが数少ない特典の一つかしらね?えぇ。
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